epeesica

新しい生活の始まり


ついこの前、猫を拾った。
俺はマンションに一人暮らししている社会人で、
猫一匹なら普通に飼える程は稼いでいる

雨の日の帰り道にその猫は捨てられていた
寒さに衰弱しきった猫を拾って家に帰り、風呂に入れた
泥まみれだった毛は白く、目は蒼と赤のオッドアイだった。

最初は新しい飼い主がみつかるまで飼っているつもりだったが、
その白い毛並みとオッドアイの猫に愛着を持ってしまい
手放せなくなった。から、今ここにこの猫がいる


「チカ、ご飯だぞ、」

と名付けた名前で呼ぶと、にゃぁと鳴いて近寄ってきた
与えられた餌に口を付けるチカに俺は

「うまいか?」

と聞くと、口の中に餌を含みながらもみゃぁと嬉しそうに鳴いた。

毎回毎回チカを見る度に「かわいい」と呟く、親バカ?言われても否定はしねぇ
だってかわいいじゃねぇか、しょうがねぇ

朝起きて、チカを構って、仕事行って、帰ってきて、チカを構っての繰り返し。
でも飽きないのはホントにチカがかわいいから、

出勤する時だって玄関で悲しそうな顔してみゃーみゃー泣くんだ、
出勤したくない気持ちを殺して家を出る

で、帰ってくると玄関でちゃんと座って待ってるんだぜ?かわいいったらありゃしねぇ

そんなこんなで、チカはcuteで律儀で甘えん坊な奴なんだ。


ある夜、いつものように一緒のベットで寝てた。

だが夜中にふと目が覚めたんだ、
いつも俺と一緒ベットで寝ているチカがいない。

「チカ?」

と、ベットから降りようと、床に足をつけたとき、
何かが俺の爪先に触れた。

「Ha?」

足元を見ると白いふわふわした毛があった。
チカだと思ったが、何か違う。
不審に思って、それを踏まないように注意をはらって電気をのスイッチがある場所に向かう。

パチッ

と電気がついて、それを見やった。

「……Ha?」

人だ、ふわふわした白…いや、銀髪の人間が
裸で横たわっている
下半身は掛け布団で隠れていて
背中を向けていて顔はみえないが、ガタイからして男だ

「Hey.てめぇどこから入ってきた?答えな?」

話しかけるとピクッと反応し、体を起こした。
声のする方向に向いたから必然的に俺を見る
向けられた顔に思わず息をのんだ
コイツ…オッドアイだ、しかもチカと同じ蒼と赤
肌も白くてとにかく綺麗でチカみたいだ
それに、人間にはない耳があった

「…猫耳?」

ぺたんと座って俺を見上げているコイツが首を痛めないよう目の前でしゃがんだ。

「お前、名前は、」

「…ちか」

ぽそっと、言ったその名前、確かにチカと言った。

ふざけてるのかと、だいたいその耳もよく売ってる奴だろ
と、耳をグッと掴んだ

「いったい!やだ、まさむね!」

掴むのを止めたのは俺の名前を口にしたから、
白い耳やら、オッドアイやら、名前やら、
猫のチカがコイツに変わったみたいだ。

うっすら涙を浮かべて俺にすり寄ってくるチカと名乗る人間
掛け布団からちらっと白い尻尾が見えた。
布団をひっぺがえすと、しっかり体から生えた尻尾だとわかった

すっと尻尾を撫でるといつも触っているチカの尻尾の感触、
触ったときにシュルッと俺の手を包み込んでくるチカの癖、
全てが一緒だった。

「…チカなのか?」

そう問うと俺をそのオッドアイの目で捉えてこくんと首を縦に振った。

「まさむね、おれ、ちかだよ」

舌足らずなのは、元が猫だからだと俺は勝手に決めつけて、
そのチカの頭を撫でてやった。
嬉しそうに甘えてくるチカを見て、
こいつはチカだ、と認識した。


「とりあえず、寝ようか」

「うん、」

二人でベットに再び入り、
いつものようにチカをぎゅっと抱いて眠った。



翌朝、重みを感じて目が覚めた。

「う…何だ?」

と目を開けるとドアップのチカの顔

「……チカ!?」

チカは真っ裸なのにも関わらず恥ずに俺を見てる。
まぁ、猫だもんな、コイツ、裸が当たり前か

「おはようまさむね!」

起きた起きたと尻尾をゆらゆら揺らしている。

「Good morning.チカ」

ちゅっと頬に口付けする挨拶をするとえへへと照れたように笑う

「あのね、ちかはいつものこれ、すきなんだ!」

にこにこと笑うチカがかわいいのは猫の時と変わらないか。

相手は雄なのにかわいいなんて、チカはどう思ってんだろうな。

「チカ、」

「どうしたの?」

「cuteだ、かわいい」

そう言ってチカを見ると顔真っ赤にして

「ばか」

と言って後ろを向いてしまった
でも尻尾は嬉しそうにふよふよ揺れている

どくん

「……Ha?」


新しい生活の始まり



やべぇ、なんだ、俺はゲイでもバイでもねぇぞ。
至ってNormalだ、のに、
なんだこの前までとは違う
愛おしい感じは





(090811)